待望の5ドアモデルとして登場し、絶大な人気を集めている「ジムニーノマド」。あの四角くて無骨なスタイリングに惹かれる方は多いと思いますが、購入を検討する際にふと気になるのが「事故への強さ」ではないでしょうか。
「本格的なオフローダーだから頑丈で安全」と思うかもしれませんが、実は一般的な乗用車とは異なる構造ゆえの注意点が存在します。今回は、ジムニーノマドの安全性や、万が一の事故の際のリスクについて詳しく解説いたします。
1. 「車体が潰れない=安全」ではない?
現代の一般的な乗用車は「モノコック構造」を採用しており、衝突時に車体が意図的にクシャッと潰れることで衝撃を吸収し、乗員を守るように設計されています。
一方、ジムニーノマドは悪路走破性を高めるために、非常に頑丈な鉄の骨格である「ラダーフレーム構造」を採用しています。このフレームは非常に硬く、衝突しても車体そのものが大破して生存空間が失われるリスクは低いです。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
車体が潰れて衝撃を吸収してくれない分、衝突時の凄まじい衝撃(G)が そのまま車内の人間にダイレクトに伝わってしまう のです。車体の見た目は無事でも、急激な減速によって乗員の脳や内臓に深刻なダメージを負う危険性があるため、「車体が潰れないから絶対に命に関わらない」という認識は非常に危険です。
なお、ジムニーノマドは2025年4月に発売された比較的新しいモデルのため、本稿執筆時点では車両単体でのJNCAP(自動車アセスメント)衝突安全性能評価の公表データは確認できていません。構造上の特性については上記の通りですが、客観的な試験データに基づく評価ではない点はご留意ください。
2. 追突された場合と、追突してしまった場合
ジムニーの硬い骨格は、事故の状況によってメリットにもデメリットにもなります。
後ろから追突された場合(もらい事故)
一般的な乗用車に追突された場合、相手の車が潰れることで衝撃を吸収してくれるため、ジムニー側の車体が大きく潰れることは少なく、キャビンはしっかりと守られます。
ただし、前へ押し出される衝撃はダイレクトに伝わるため、「むち打ち(頸椎捻挫)」 などのダメージを受けやすい点には注意が必要です。日頃からヘッドレストの高さを正しく合わせておくことが最大の防御になります。
自分が追突してしまった場合
これが最も注意すべきケースです。ジムニーの非常に硬いフレームが一般的な乗用車に直接ぶつかるため、相手の車を大きく破壊してしまう(加害性が高い)という特徴があります。
さらに、車高が高いため、相手のバンパーを通り越してトランクやドアなどの柔らかい部分に直接突っ込んでしまう「オーバーライド現象」が起こりやすくなります。
3. 重心の高さによる横転リスク
ジムニーのアイデンティティでもある「高い車高」は、悪路を走るためには必須ですが、物理的に重心が高くなるという宿命を背負っています。
そのため、高速走行中に障害物を避けるために急ハンドルを切ったり、側面から衝突されたりした場合に、一般的な乗用車や都市型SUVよりも 横転(ロールオーバー)しやすい というリスクを抱えています。
4. 予防安全装備はしっかり搭載(型による違いに注意)
ここまで構造上の弱点を解説してきましたが、ジムニーノマドが決して危険な車というわけではありません。
3ドアモデルの初期型などでは安全装備がオプション扱いの時代もありましたが、最新のモデルであるジムニーノマドには「スズキ セーフティ サポート」がしっかりと標準装備されています。ただし、この衝突被害軽減ブレーキは 発売時期(型)によって方式が異なる ため、購入・検討時には注意が必要です。
- 1型(2025年4月〜):「デュアルカメラブレーキサポート」を搭載。2個のカメラ(ステレオカメラ方式)で前方の車両や歩行者を検知し、夜間の歩行者検知にも対応します。
- 2型(2026年7月〜の一部仕様変更モデル):「デュアルセンサーブレーキサポートⅡ」へ進化。単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせた方式となり、悪天候・夜間でも安定した検知性能を発揮するほか、車線逸脱抑制機能(ステアリング支援付き)も標準装備されました。
なお、通常の3ドアジムニー(JB64)やジムニーシエラ(JB74)が長らく採用してきた「デュアルセンサーブレーキサポート」(単眼カメラ+赤外線レーザー方式)は、ノマドの1型とは異なるシステムです。型式によって名称・方式が入り組んでいるため、中古車情報やカタログを確認する際は型式(1型/2型)も併せて確認することをおすすめします。
衝突時の物理的な不利をカバーするために、「そもそも事故を起こさないための電子制御」は、型を問わずいずれも現代の基準を満たしたものが組み込まれています。
まとめ:特性を理解して余裕のある運転を
ジムニーノマドは、最新のファミリーカーと同等の「乗員保護性能(衝撃吸収性)」を持っているわけではありません。しかし、それを補って余りある唯一無二のデザインと走破性が最大の魅力です。
この車と安全に長く付き合うためのコツは以下の通りです。
- 車間距離をいつもより多めにとる
- スピードを抑え、急ハンドルを避ける
- ヘッドレストを正しい位置に合わせる
- 購入時は型式(1型/2型)ごとの安全装備の違いも確認する
「頑丈な車だから大丈夫」と過信せず、その構造上の特性をしっかりと理解した上で、ゆったりと心に余裕を持った運転を楽しむのが、ジムニー乗りの粋なスタイルだと私は思います。