日本医科大学付属病院(文京区千駄木)に通うことになったとき、最初に悩むのがアクセス手段だ。葛飾区や江戸川区、総武線沿線から通う人にとって、この病院は「電車で行けなくはないが、車のほうが早い」という微妙な距離にある。
実際に両方を検討した結果を、時間・費用・体力の3つの軸で整理しておく。
結論を先に
- 基本は車。 到着までの差が片道で30〜50分ある。一人でも、季節を問わず、この差は無視しにくい
- 大人2人以上で行くなら、金額でも車が安い。 電車代は人数分かかるが、ガソリン代と駐車料金は1台分で変わらない
- 夏はなおさら車。 徒歩と待ち時間をどれだけ削れるかがすべてで、金額差はこの時期には見合わない
- 子ども連れ、高齢の家族の付き添い、体調が悪い日も車。 差額1,000円前後で、片道30分以上の時間と相当な体力を節約できる
- 電車が勝つのは条件が揃ったときだけ。 運転できない検査の日、長時間滞在が確定している日、朝の到着時刻を確実にしたい日
- 駐車場は院内よりも周辺の予約制のほうが安く済むことがある
前提:病院は駅から遠くない
まず誤解しやすい点だが、日本医科大学付属病院は駅から歩ける場所にある。
| 最寄駅 | 出口 | 徒歩 |
|---|---|---|
| 東京メトロ千代田線 千駄木駅 | 1番出口 | 約7分 |
| 東京メトロ千代田線 根津駅 | 1番出口 | 約7分 |
| 東京メトロ南北線 東大前駅 | 2番出口 | 約5分 |
| 東京メトロ南北線 本駒込駅 | 1番出口 | 約10分 |
| 都営三田線 白山駅 | A2・A3出口 | 約10分 |
さらにJR日暮里駅の東口からは、病院が運行する無料送迎車が出ている。つまり「駅からバスやタクシーに乗り換えないと着かない病院」ではない。
ただし、徒歩7分という数字は「大人が一人で、身軽に歩いた場合」の話だ。ベビーカーを押していれば10分以上かかるし、真夏なら到着した時点で汗だくになる。ここが後述する判断の分かれ目になる。
電車ルート:所要70〜80分が現実的
総武線沿線から向かう場合、主なルートは2つ。
ルートA:千代田線に乗り換える
新小岩から総武線各駅停車で御茶ノ水(約15分)、徒歩で新御茶ノ水駅へ移動し、千代田線で千駄木(約6分)。駅から徒歩7分。
ルートB:日暮里から無料送迎車
新小岩から総武線で秋葉原(約11分)、山手線または京浜東北線で日暮里(約6分)。東口から病院の無料送迎車に乗る。
運賃は経路によって片道250〜450円程度。ルートBのほうが安く、歩く距離も短い。
問題はドア・ツー・ドアの時間だ。駅から離れたエリアに住んでいる場合、自宅から駅までバスで15〜20分(待ち時間込み)かかる。これを足すと、家を出てから病院の受付に着くまで70〜80分。乗換の待ち時間やエレベーターを探す時間を考えると、1時間20分程度を見ておいたほうが安全だ。
車ルート:通常30分、混雑時でも45分
葛飾区南部から千駄木までは12km前後。蔵前橋通りから本郷通り・不忍通りへ抜けるルートが一般的で、空いていれば30分、平日朝の混雑時でも45分程度で着く。首都高を使う手もあるが、この距離では下道との差はあまり出ない。
つまり所要時間で見ると、車は電車の半分以下になることが多い。
院内駐車場のスペック
- 本館の機械式駐車場、収容163台
- 料金は30分400円(24時間ごとの最大料金4,000円)
- 外来を受診した場合は1時間無料
- 車両制限:長さ5.3m以下/幅1.95m以下/高さ2.0m以下
注意点は2つ。ひとつは高さ制限2.0mで、ルーフボックスを積んだ車や背の高いミニバンは入れないことがある。もうひとつは機械式ゆえの待ち時間で、外来のピーク時間帯は入庫にも出庫にも列ができる。予約時間に対して30分は余裕をみておきたい。
周辺のコインパーキング
病院周辺の時間貸し駐車場は20分440円・3時間最大2,000円といった水準で、決して安くはない。ただし予約制の駐車場サービス(特PやakippaなどのWebサービス)を事前に押さえておくと、1日1,000〜2,000円で確保できるケースがある。徒歩5〜10分歩くことにはなるが、機械式の入出庫待ちを回避できるメリットは大きい。
ただしこれは「事前に予約できた場合」の話であって、飛び込みで停めるコインパーキングとは別物だ。ここを混同すると痛い目に遭う。
飛び込みのコインパーキングは上限料金を必ず確認する
千駄木・根津周辺の時間貸し駐車場には、上限料金の設定がないものが混ざっている。この地域の相場は20分440円、つまり1時間1,300円前後なので、上限がなければ半日で1万円、丸1日なら2万円を超える。院内駐車場が満車で、慌てて近くの空いている区画に停めた結果、想定の10倍請求されたという話は珍しくない。
看板を見るときは、次の3点を確認したい。
- そもそも上限料金があるか。 「最大料金」の表示がない駐車場は、止まらずに課金され続ける
- 上限に「繰り返しあり/なし」のどちらか。 「入庫後3時間 最大2,000円」の表記は、3時間を過ぎると通常の時間料金に戻る場合がある。1日単位の上限とは限らない
- その上限が適用される時間帯。 「夜間(17時〜8時)最大400円」のような夜間限定の上限は、日中には効かない。早朝に入庫して日中まで停める場合が最も危険で、8時を境に料金体系が切り替わる
長時間になる可能性が少しでもあるとき、たとえば出産の付き添い、緊急外来、検査入院、面会などは、院内駐車場の24時間ごと最大4,000円が結果的に最も安全な選択肢になる。上限が明示されていて、これ以上は増えないと分かっているからだ。時間単価だけを見て周辺の駐車場を選ぶと逆転しやすい。
なお緊急時は予約制サービスも当てにできない。前日までに押さえておくものなので、深夜や早朝に突然必要になったときは選択肢に入らない。
費用と時間の比較
大人1人が通院した場合の目安。
| 電車 | 車 | |
|---|---|---|
| 所要時間(片道) | 70〜80分 | 30〜45分 |
| 交通費(往復) | 約900〜1,300円 | 燃料300〜400円+駐車場 |
| 駐車場(3時間想定) | — | 約1,200〜1,600円 |
| 合計(往復) | 約900〜1,300円 | 約1,500〜2,000円 |
金額差は600〜1,000円程度。検査や面会で長時間になり、駐車場が上限の4,000円に達した日でも、差は3,000円ちょっとに収まる。
一方で時間差は片道30〜50分、往復で1時間から1時間40分ある。600円台の差額で往復1時間半が浮くなら、一人で通院する場合でも車を選ぶ理由としては十分だ。「電車のほうが安いから電車」という判断は、この時間差を計算に入れていないことが多い。
人数が増えると、金額差そのものが逆転する
ここまでは大人1人で計算してきたが、家族で通院する場合は前提が変わる。電車代は人数分かかるのに対し、ガソリン代と駐車料金は1台分のまま動かないからだ。
未就学児は運賃がかからない(同伴の大人1人につき2人まで無料)ので、大人2人と子ども1人で行く場合、支払うのは大人2人分になる。
| 人数 | 電車(往復合計) | 車(往復合計) |
|---|---|---|
| 大人1人 | 約900〜1,300円 | 約1,500〜2,000円 |
| 大人2人+未就学児1人 | 約1,800〜2,600円 | 約1,500〜2,000円 |
| 大人3人 | 約2,800〜3,900円 | 約1,500〜2,000円 |
損益分岐点は大人2人。ここを超えると、時間だけでなく金額でも車が有利になる。院内駐車場の1時間無料も1台につき効くので、人数が増えるほど1人あたりの負担は下がっていく。
つまり家族で通う場合、「電車のほうが安い」という前提自体が成立しない。
夏は、この比較そのものが変わる
真夏に電車で通院するということは、次の徒歩と待ち時間を全部炎天下でこなすということだ。
- 自宅から駅までの移動、バス停での待ち時間
- 駅のホームでの待ち時間
- 御茶ノ水と新御茶ノ水の乗換徒歩
- 千駄木駅から病院までの7分
体感で20〜30分は屋外にいることになる。病院に着く頃には汗だくで、診察を待つ間もずっと不快なままだ。
車ならこの区間がすべてエアコンの効いた車内に置き換わる。実質的に外を歩くのは駐車場から入口までの数十秒だけになる。金額差1,000円前後で「夏の屋外徒歩をゼロにできる」と考えると、7〜9月に関しては車一択でいいと思う。同じ理屈で、雨の日と真冬も車が有利になる。
車を選んだほうがいいケース
季節を問わず、子ども連れの通院は車を強く勧めたい。電車の場合、工程はこうなる。
- 子どもを自転車の座席に乗せて駅まで移動する
- 駐輪場の空きを探す(満車なら別の駐輪場へ)
- 電車内で騒がないよう気を配る
- 乗換でエレベーターを探す
- 駅から病院まで7分歩く。ベビーカーを嫌がれば抱っこに切り替える
これを真夏にやると、病院に着いた時点で親も子も消耗している。診察を受ける前に体力を使い切る構造になっている。車なら、家を出て駐車場に入れれば終わりだ。荷物も置いておける。
同じ理由で、以下のケースも車が向いている。
- 高齢の家族を連れて行く場合
- 自分の体調が悪い日、処置後で歩きづらい日
- 検査で荷物が多い日、入院・退院の日
それでも電車を選んだほうがいいケース
車の優位は大きいが、次の場合は電車のほうが合理的だ。
- 運転できない検査・処置がある日。 散瞳を伴う眼科検査、鎮静剤を使う内視鏡、点滴後などは、そもそもハンドルを握れない。付き添いの運転者がいないなら電車一択
- 滞在が長時間になることが確定している場合。 駐車料金が上限に張り付き、金額差が広がる
- 平日朝の予約で、到着時刻を確実にしたい場合。 都心部の朝は所要時間が読みにくい。電車のほうが上限を計算しやすい
- 診察後に上野や御茶ノ水などへ寄る予定がある場合
費用を抑えるコツ
- 外来受診なら院内駐車場の1時間無料を使う。 受付で忘れずに処理してもらう
- 短時間で済む日は、周辺の予約制駐車場を前日までに押さえる。 上限額が読めるので予算が立てやすい
- 長時間・早朝・緊急のときは院内駐車場を選ぶ。 24時間最大4,000円という上限が明示されているぶん、上限なしのコインパーキングより安全
- 日暮里ルートを覚えておく。 無料送迎車を使えば電車ルートの運賃と徒歩距離を圧縮できる
まとめ
「どちらが安いか」で言えば、大人1人のときだけ電車が安い。それも差は往復1,000円前後にすぎず、大人2人以上になれば金額でも車が逆転する。
対して時間差は往復で1時間から1時間40分、体力の消耗量はそれ以上に差が出る。特に子ども連れや真夏の通院では、電車ルートは「やればできるが、毎回やるのは現実的ではない」水準の負担になる。
判断の軸は「安さ」ではなく「移動と屋外にいる時間をどれだけ減らせるか」だと考えたほうが実態に合う。車が使えるなら基本は車、運転できない検査の日や長時間滞在が確定している日だけ電車。この順序で考えるほうが、結果的に無理のない通院になると思う。
※駐車料金・送迎車の運行時間・出口の位置などは変更されることがあります。実際に行く前に病院の公式サイトで最新情報を確認してください。