事務所にシャープの小さい空気清浄機(FU-RC01)を置いている。6畳用の円筒形のやつで、買ってからずっと「弱」でつけっぱなしにしていた。
つけっぱなしにしていた理由は特にない。強にするとうるさいし、弱なら静かで、なんとなく空気がきれいになっている気がしていた。その「気がしていた」だけだったことに、数字を見て気づいた。
弱で回している空気清浄機は、ほぼ何もしていない
カタログの風量を並べるとこうなる。
| モード | 風量 | 運転音 | 消費電力 |
|---|---|---|---|
| 強 | 1.5 m³/分 | 48 dB | 20 W |
| 中 | 0.8 m³/分 | 34 dB | 8.6 W |
| 弱 | 0.3 m³/分 | 22 dB | 3.0 W |
弱は 0.3 m³/分、つまり1時間で 18 m³。6畳(約10m²)の部屋は天井まで含めるとだいたい 24 m³ なので、部屋の空気を一周させるだけで1時間20分かかる計算になる。
しかもこの機種の「6畳を30分で清浄」という表記は強運転が前提だ。弱は強のちょうど5分の1の風量なので、6畳でも単純計算で2時間半。うちの事務所は6畳より広い。つまり汚れが供給されるスピードのほうが速くて、いつまで経っても追いつかない。
静かでいい、と思っていた運転モードは、静かなだけだった。
電気代は、私の勘違いだった
売ろうと思ったきっかけのひとつが「電気代がかかっている気がする」だったのだが、これは完全に思い込みだった。
弱は3W。1時間あたり0.09円。24時間つけっぱなしを1ヶ月続けても65円くらいにしかならない。強(20W)でも1時間0.62円で、営業時間の8時間×22日で月110円ほど。
年間で数百円から数千円。ペットボトル数本ぶんだ。これを理由に手放すのは筋が悪い。
じゃあ何にコストがかかっていたのか、と考え直した。
- フィルター代:集じん・脱臭一体型フィルターの交換目安が約1年。本体が1万円ちょっとの機械に、毎年フィルター代を払い続けることになる
- 場所:床に直径19cmの円柱が居座る
- 頭の中の枠:「空気清浄機を置いてある」という事実が、換気や掃除をサボる言い訳になっていた
三つ目がいちばん厄介だった。
空気清浄機・換気・掃除は、互いの代わりにならない
調べ直して整理できたのはここだ。この三つは役割がまったく違う。
換気にしかできないこと は、CO2とVOC(建材や印刷物から出るやつ)を外に出すこと。事務所で頭がぼーっとする、午後に眠くなる、みたいなやつの正体はたいていCO2で、空気清浄機はこれを1ppmも減らせない。窓を開けるしかない。
掃除にしかできないこと は、床や棚に積もったぶんの除去。浮いていないホコリは清浄機の中を通らない。
空気清浄機にしかできないこと は、浮いている微粒子(花粉、PM2.5、ハウスダスト)をフィルターで捕ること。これは換気だとむしろ逆効果になる場面がある。花粉シーズンに窓を開ければ、外から入ってくるほうが多い。
つまり順番としては、掃除と換気が土台で、空気清浄機はその上に乗る補助でしかない。私はこの順番をなんとなく逆に運用していた。
そもそも私はサーキュレーターを顔に当てている
決定的なのはここだった。私は事務所で、サーキュレーターの風を自分の顔に直接当てている。
サーキュレーターがホコリを集めているわけではない。通り抜ける空気の粉じん濃度は部屋の平均とだいたい同じで、濃縮はされない。それでも実害は三方向からある。
- 再舞い上がり:床や棚に積もっていたホコリが気流で巻き上がる。せっかく掃除で床に落ち着いていたものが空中に戻る
- 呼吸域への直撃:部屋の反対側にあったホコリが、顔の高さにまっすぐ運ばれてくる
- 羽根からの脱落:うちのサーキュレーターは掃除していないのでデカいホコリが付いている。基本はくっついたままだが、起動時や振動で落ちる
そして風量差が決定的だ。空気清浄機の弱は 0.3 m³/分。家庭用サーキュレーターは機種によるが毎分10m³以上動かすものが多い。その差は実に 数十倍。
清浄機が1時間かけて 18 m³ をきれいにしている横で、サーキュレーターが同じ1時間で数百m³をかき混ぜている。勝負になっていない。私は片手でホコリを撒きながら、もう片方の手でストローみたいな細さの掃除機を回していたことになる。
ただし、この理屈が本当に効くのは「だから清浄機を売る」より「だからサーキュレーターを掃除しろ」のほうだ。羽根とガードのホコリを落とすのは費用ゼロで、いま挙げた三つのうち二つに直接効く。あと直当ては目が乾く。壁か天井に当てて部屋全体を回すほうが、粉じん的にも体感温度的にも本当は効率がいい。
わかっていても顔に当てるのだが。
結論
売る。
売る理由は電気代ではなく、「使い方が間違っていたし、正しく使う気もない」からだ。必要なときだけ中や強で20分回す、という運用に切り替えられるならまだ持っていていい。でも私はやらない。うるさいから結局また弱に戻す。1年やってそれがわかった。
もし買い直すなら、次は適用畳数を部屋の広さに合わせて、静音でもそこそこ風量が出るサイズを選ぶ。6畳用を6畳より広い部屋で弱で回す、という一番効かない組み合わせだけは、もうやらない。