最初に断っておくと、これは人生の答えの記事ではない。36歳時点のスナップショットだ。
なぜそう言い切れるかというと、私は一度、人生の目的が丸ごと書き換わるのを経験しているからだ。息子が生まれる前、私は「息子のそばにいたい」なんて思っていなかった。父親になろうとも思っていなかった。なる気がなかったんじゃなくて、それがどういうことか、わかっていなかった。生まれてきたことで、私の人生は大幅に書き換わった。
だから2年後の私が何を大事にしているかは、今の私にはわからない。わからないなりに、今の時点の答えを記録しておく。たぶんこの手の記事は、2年後にもまた書くと思う。これはその一本目だ。
きっかけはAIとの雑談だった。「AIの発展で人が働かなくなる時代はいつ来るのか」。私はあと20年は来ないと思っている。でも、ここ半年のAIの進化は異常で、半年後すら読めない。そんな話をしているうちに、話は社会の未来から自分の未来になっていった。
欲しいのは仕事じゃなくて安全弁
私は昔から人に雇われるのが好きじゃない。受託みたいに、言われたものを言われた通りに作る仕事も好きじゃない。じゃあ独立してガンガン稼ぎたいのかというと、それも違う。無我夢中で働きたいとは思っていない。
話しているうちに気づいたのは、私が欲しいのは「仕事」そのものではなく、「仕事がなくなっても平気だ」という安全弁だということだった。
だから資産形成をしている。目標額を決めて、そこまでは全力で積み立てる。贅沢がしたいわけじゃない。働かなくても死なない状態が確定するライン、それが欲しいだけだ。AIで雇用がどう変わるかわからない時代に、個人が取れる一番堅い防衛は、稼ぐ力を磨き続けることじゃなくて、働かなくても平気な状態を先に作ることだと思っている。稼ぐ力はAIとの競争に晒され続けるけど、資産と低い生活費は競争に晒されないから。
36歳の目的関数は一本だった
AIに「目的関数がはっきりしている人は意思決定が速い」と言われた。何を最大化したいのか、迷ったときの物差しは何か、という話だ。
今の私の場合、突き詰めるとこうなった。
息子を最後まで育て上げること。そのために資産を作ること。それだけ。
私は親からの愛というものを受け取らずに育った。だから自分の子には、「父親は最後まで自分のことを第一に考えてくれていた」という記憶を残してあげたい。何かをしてあげる父親じゃなくて、いてくれる父親。泣いてたら助けて、笑ってたら一緒に笑う。それが今の私のやりたいことらしい。
「何がしたいかわからない」とずっと思っていたけど、わからないのは趣味とか夢とかの装飾の部分であって、何のために生きるかは決まっていた。装飾はなくてもいいのかもしれない。
繰り返すが、この目的関数は3年前には存在しなかった。息子が生まれた日にインストールされたものだ。だから「一本に定まった」と書きつつ、これが最終版だとは思っていない。
「そばにいる」の中身を疑ってみた
ただ、正直に書くと、きれいな話だけでは終わらなかった。
私は今フルリモートで働いていて、毎日家にいる。息子のそばにいられる働き方だと思っていた。でもよく考えたら、平日は仕事で疲れ果てていて、迎えに行ったあとは酒を飲んでいて、同じ部屋にはいるけどちゃんと見てはいない。「家にいる=息子といる」は、平日に関しては成立していなかった。
だったら、土日にしっかり一緒にいられれば、平日は外で働いてオンオフを切り替える方がいいのかもしれない。通勤という強制的な区切りがあった方が、疲労を家に持ち込まなくて済むのかもしれない。
わからない。やってみないとわからない。ただ、「リモートが正義」という思い込みは一回外せた。働き方は目的じゃなくて手段で、目的は息子の前で笑っていられることだから、手段の方は試して選び直せばいい。
ちなみに息子は今2歳で、可愛さがピークすぎて逆にきつい。いつになったら可愛くなくなって自分の時間が戻ってくるのかと調べたら、どうやら可愛くなくなるのではなく、向こうが先に親を卒業していくらしい。だとすると今のきつさは、あと数年しか浴びられない限定コンテンツということになる。きついまま浴びておくことにする。
理想と現実は食い違ったままでいい
体に良い生活が何かは知っている。淡々と仕事をして、よく寝て、運動して、酒を控える。全部わかってる。でもそれをやったらストレスで、夜の一杯が唯一のリラックスで、美味い飯が食いたい。理想と自分のやることは食い違う。これが人間だと思う。
仏教で言う「苦」みたいなもので、何をやっても完全には満たされない。だったら、矛盾を消そうとするより、矛盾を抱えたまま目の前のことを大事にする方が現実的だ。矛盾のない立派な理屈より、矛盾を抱えたまま毎晩家にいる父親の方が、子どもにとっては本物だと思うことにした。
36歳のまとめ
- 欲しいのは成功じゃなくて安全弁
- 目的は息子を育て上げること。資産形成はそのための手段
- 「そばにいる」の中身は思い込みかもしれないから、働き方は試しながら選ぶ
- 矛盾は消えない。抱えたまま進む
将来ずっとコードを書き続けなきゃいけないのかと不安だった時期があるけど、今は辛い時にAIが代わりに書いてくれる。まさかこんな日が来るとは思わなかった。1年後、2年後にはもっと前提が変わっているんだろう。
2年後の私へ。この記事を読み返して、どこが変わったか答え合わせをしてほしい。全部変わっていても、それはそれで正しい。息子が生まれたとき、そうだったように。