半年前、私はこう書きました。
CodeX > Antigravity > Gemini > Claude
自分で書いておいてなんですが、この順位は完全に崩壊しました。今の私の答えは一行で済みます。
開発はClaude Max一択。
「特定のプラットフォームにロックインされる年額払いは絶対やめましょう」と書いた男が、半年後にMaxプランを契約して全部そこに突っ込んでいる。手のひらが高速回転してますが、言い訳はしません。状況が変わったんです。恐ろしいくらいに。
まず、半年で何が起きたのか
前回の記事は2026年2月です。あれから半年、勢力図はこうなりました。
Gemini:開発ツール以前に、モデルが出てこない
前回「Gemini Code Assistは解約」と書きましたが、Googleの状況は当時より深刻です。
フラッグシップのGemini 3.5 Proが、いまだに一般提供されていません。5月のGoogle I/Oで発表され、6月提供予定と言われていたものが、7月下旬の今も限定プレビュー段階のままです。
延期の理由がまた刺さります。Bloombergの報道によれば、コーディング性能が社内目標に届いていないことが一因だとされています。この報道が出た日、Alphabetの株価は約4%下落しました。
半年前に私が「Googleは開発ツールとしては完全に遅れを取った」と書いたのは、当時はあくまで個人の使用感でした。それが今、Bloombergと株式市場によって追認された形です。当てたかったわけではないんですが。
Gemini 3.5 Flashは一般提供されていて、軽量用途では普通に使えます。ただ、開発の主力にする話ではない。
ChatGPT:これは素直に巻き返してきた
前回「動作がもっさりしていてUXが悪い」と切り捨てたChatGPTですが、これは訂正が必要です。
7月にGPT-5.6がGA(一般提供)になりました。Sol / Terra / Lunaの3階層構成で、OpenAIの公式ベンチマークによれば、コーディングエージェント指標でSolがトップに立っています。
とくに注目されているのがTerminal-Bench 2.1のスコアです。コマンドライン作業(計画・反復・ツール連携)を測る指標で、SolがClaude Mythos 5をわずかに上回ったと発表されています。
さらに効きそうなのがトークン効率です。OpenAIの主張では、同等以上の性能を出力トークン半分以下・所要時間も大幅短縮で実現しているとしています。サブスクの枠を食い潰す時代において、これは無視できない訴求です。
ただし注意点があります。これらはすべてOpenAI公式の数値で、独立した第三者検証ではありません。 ベンチマークが実務の体感に直結しないのは、我々が散々味わってきたことです。
とはいえ、半年前の「もっさり」評価はもう通用しません。私は乗り換えていませんが、Codexユーザーが移行を検討する理由は十分あると思います。
Claude:Mythos階層の登場と、その代償
Anthropicは6月にMythosという新階層を作りました。Opus 4.8の上に位置するモデル層です。Claude Fable 5がその一般提供版で、限定パートナー向けのClaude Mythos 5と同一の基盤モデルに、安全分類器を組み込んだものとされています。
このFable 5、リリース直後から情報が乱高下しました。
- 6月9日リリース、その3日後に米商務省の輸出規制指示で停止
- 6月30日に規制解除、7月1日に再開
- サブスク内提供の期限が7月7日 → 12日 → 19日と延長を繰り返す
- 7月20日以降、Max / Team Premiumのみサブスク内で恒久提供(週次上限の50%まで)。Pro / Team Standardは従量課金へ
私がMaxを契約している理由は、正直これが大きいです。Fable 5がサブスク枠に入るかどうかが、Proとの実質的な差になってしまった。
私の開発スタイルが変わった話
ここからが本題です。ツールの順位以上に、開発のやり方そのものが変わりました。
前回:「指示書」を書いていた
半年前の私のワークフローはこうでした。
- Gemini(Chat)に要件を投げ、詳細な指示書を作らせる
- その指示書をCodeXに食わせる
- CodeXが実装
GeminiにPMをやらせて、CodeXを作業員として使う分業体制。当時はこれが最適解でした。CodeXは要件定義さえ完璧なら期待通りに動く代わりに、抽象的な指示だとゴミを吐く。だから指示書の精度が全てだった。
今:「お願いしてるだけ」
今のワークフローは、正直これです。
- Claudeにお願いする
- 出てきたものを見る
- 違うところを言う
- 2に戻る
- 完成したら、そこで初めて人間がコードを読む
指示書を作っていません。仕様書も書いていません。本当にお願いしてるだけです。
これで回るようになったのが、この半年の一番大きな変化だと思います。前は「コンパイルが通らない」「エラーが出る」というレベルで詰まっていたのが、今のモデルはそこで失敗しない。人間が望む完璧な状態にならないことはありますが、それは単に意思疎通ができていないだけで、適切に伝えれば通ります。
なぜ途中でコードを読まないのか
読んでも意味がないからです。
途中のコードを読んで「ここはこうしたほうが」と指摘すると、その修正のために別の場所が動き、また読み直しになる。完成に近づいてから一度読むほうが、トータルの読解コストが低い。
これは人間のコードレビューとは前提が違います。人間の書いたコードは書き直しコストが高いので早めに指摘する価値がありますが、AIの生成物は書き直しコストがほぼゼロです。だったら固まってから読めばいい。
それでも人間が読まなきゃいけない理由
じゃあ完成後のレビューも要らなくなるかというと、今のところそうはなっていません。読むと、だいたい同じ種類の問題が出てきます。
1. 微妙な車輪の再発明
既にプロジェクト内に存在する処理を、また書いてくる。ライブラリで済む処理を自前実装してくる。
2. 「同じ機能のつもり」が別実装になる
これが一番多い。私が別のタイミングで別の言い方で依頼したせいで、AI側が別の機能だと認識して、似たような関数が複数生まれる。
本来はそこを統一して同じ関数を通せば、品質も上がるし修正箇所も一箇所で済む。この判断は、リポジトリ全体を俯瞰して「これとこれは本質的に同じことをしている」と気づく必要があります。そしてこれは、依頼した本人である私が一番気づきやすい。
3. 局所最適の積み重ね
一回一回の依頼は完璧にこなすんです。でもその集合体としてのコードベースが、だんだん歪んでいく。
Fable 5を使っても、これは起きます。 モデルの賢さの問題ではなく、コンテキストの持ち方の問題なんだと思います。
AGIの判定基準は「私が読まなくてよくなった時」
ここまで来ると「もうAGIなんじゃないの」という気持ちになります。実際、私も一瞬そう思いました。
でも、コードを読んでいるとAGIとは程遠いと感じます。
面白いのは、この判定が自動的に下される構造になっていることです。私がAIの書いたコードを読んで「もう大丈夫だな」と思った時、つまり私が「この関数は統一したほうがいい」と指摘する必要がなくなった時。それがAGIの到達点なんだろうと思います。
今はまだ、読むと必ず何か言うことがある。だから、まだです。
もう一つ言えるのは、AIが強いのは検証が速く安く回る領域だということです。コンパイラとテストが即座に正誤を返してくれるコーディングは、AIにとって最高の条件が揃っています。逆に「そもそもこの機能は作るべきか」「この技術選定は3年後どうなるか」といった、正解のない判断は伸びていない。私が読んで直しているのは、ほぼ後者の領域です。
2026年下半期のDev Stack:私の結論
半年前と真逆のことを書きます。
1. Claude Max:主力、というか全部
コードを書くのは全部ここです。Opus 4.8を常用し、詰まったらFable 5に上げる。
Fable枠(週次上限の50%)は温存しないほうがいいというのが今の理解です。Fable枠と他モデルの枠は食い合わない設計なので、Fableを我慢しても他が増えるわけではない。難しいタスクには遠慮なく投げるべきです。
思考レベルを中に落として枠を持たせるより、Fable高で使い切って、あとはOpus高で回すほうが総合的に良い結果になります。中途半端な設定が一番損です。
2. 前回の「Claudeは傭兵」は撤回
半年前の私は「Claudeは常駐させるエンジニアではなく、時給の高いスーパーフリーランス」と書きました。泥酔時と炎上案件だけ召喚しろと。
これはAPI従量課金前提だったからです。Maxのサブスクなら、上限までは追加請求が来ない。傭兵を月極で雇えるようになった、という話です。
3. ChatGPTは「様子見だが要注視」に格上げ
GPT-5.6のトークン効率の主張が本当なら、これは効きます。Codexで運用しているなら試す価値はあると思います。私は今のところ移行しませんが、半年後にまた手のひらを返している可能性は否定しません。
4. Geminiは開発から外れたまま
3.5 Proが出てから再評価します。今は判断材料がありません。
5. セキュリティの話は、前回から何も変わらない
ここだけは半年前と同じことを書きます。
- Zero Data Retentionの設定と学習利用のオプトアウトは必ず確認する
- 管理者の許可なくツールを勝手に入れない
.gitignoreと各ツールのプライバシーポリシーは読む
AIに任せる範囲が広がったぶん、リポジトリごと渡す機会も増えています。 便利さと引き換えに投げているものが何なのかは、常に把握しておくべきです。
まとめ
半年で、私の開発は「指示書を書いてAIに実装させる」から「お願いして、出てきたものを直してもらって、最後に読む」に変わりました。
順位もひっくり返りました。前回最下位だったClaudeが単独首位で、それ以外は候補にすら上がっていません。
そして、また半年後にこれを引用して「手のひらを返しています」と書くことになる予感がしています。四半期ごとに覇権が変わるのは、前回から何も変わっていません。
ただ一つ確かなのは、まだ人間がコードを読まなければいけないということです。読まなくてよくなった時、その時が本当の転換点なんだと思います。
今のところ、読むと直すところがあります。