ついに静岡県が着工を容認したことで、長年ストップしていたリニア中央新幹線の工事が再び動き出した。とはいえ、品川〜名古屋間の開業は早くても2036年以降になる見込みだ。
今回は、なぜそんなに時間がかかるのか、そして「品川〜名古屋40分」という圧倒的なスピードの裏側について、私なりに整理してみた。
なぜ開業にあと10年もかかるのか?
ズバリ、南アルプスを貫くトンネル工事が日本の土木史上「最難関」だからだ。
- 凄まじい地圧: 地表からトンネルまで最大1,000m以上の深さがあるため、掘るたびに岩盤が弾け飛ぶ危険がある。
- 大量の湧水: 地下水を蓄えたもろい地層が多く、水抜きや止水作業に膨大な時間がかかる。
- アクセス困難な秘境: 重機を入れるための道や宿舎作りといった「準備」だけで数年が飛んでいく。
工期の大半が「掘る」以前の段階で消えていくというのが、この工事の恐ろしいところだ。
品川〜名古屋が「40分」になるカラクリ
東海道新幹線「のぞみ」で約1時間30分かかる区間が、なぜリニアなら40分になるのか。それは「圧倒的な直線のルート」と「時速505kmのスピード」の合わせ技によるものだ。
普通の新幹線がリニアの直線を走っても、最高時速の限界(鉄の車輪とレールの摩擦、騒音など)や急な坂道に対応できないため、どうやっても1時間強はかかってしまう。車輪を捨てて磁力で浮いて走るリニアだからこそ、山脈を一直線にぶち抜くルートをフルスピードで駆け抜けることができる。
なぜ既存の新幹線と同じルートにしないのか?
「今の東海道新幹線と同じ海沿いに造れば、山を掘る苦労もなかったのでは?」と思うかもしれない。しかし、それだとリニアの存在意義が根本から揺らいでしまう理由がある。
- カーブが多すぎる: 海沿いのルートはカーブが多く、時速500kmを出そうにも常に減速しなければならない。
- 災害時のバックアップ: 南海トラフ巨大地震などで海沿いのルートが被災した際、内陸にもう一本の「大動脈」がないと日本の交通網が完全に麻痺してしまう。
- 東海道新幹線の大規模修繕: 60年以上走っている現在の新幹線を根本から直すには、一度乗客をリニアに逃がすための迂回路が必要になる。
つまりリニアは、ただ速いだけの新しい乗り物ではなく、老朽化した大動脈を延命させるための「もう一本の背骨」でもあるわけだ。
「全駅停車」だと40分では着かない
品川〜名古屋間には、実は6つの駅が予定されている。
- 品川駅(東京)
- 神奈川県駅(仮称)
- 山梨県駅(仮称)
- 長野県駅(仮称)
- 岐阜県駅(仮称)
- 名古屋駅(愛知)
「品川〜名古屋40分」というのは、途中の駅をすべて飛ばした「直行便」の場合だ。すべての駅に停まる「各駅停車」だと、加減速や停車時間を含めて約72分かかる計算になる。
ただ、各駅停車でも現在の「のぞみ」より20分近く速い。例えば品川から山梨までは約25分、長野までは約45分で着いてしまう。これまでアクセスしづらかった場所が、一気に生活圏内に入るほどのインパクトがある。
完成まではまだしばらく時間がかかるが、日本の地図を根底から変えるビッグプロジェクトなのは間違いない。2036年以降の景色が今から楽しみだ。