昨今の新築戸建て住宅では、窓の防犯や台風対策として、上から下ろす「巻き上げ式のシャッター」が標準的になっています。しかし、築30年〜40年ほどの住宅を見ると、シャッターではなく、横にガラガラとスライドさせて戸袋に収納する「引き戸タイプの雨戸」が一般的です。

現在では当たり前のように普及しているシャッターですが、約35年前(1990年代前半)の一般家庭においては、実は一部の家でのみ採用される 「高級品」 でした。

今回は、なぜ当時のシャッターが高級品だったのか、その背景にある理由を住宅設備の歴史から紐解いてみます。

1. 構造の複雑さと部品点数の多さ

引き戸の雨戸は、極端に言えば「四角い板」と「上下のレール」があれば機能する、非常にシンプルで確立された仕組みです。

対してシャッターは、何十枚もの細長い金属の羽根(スラット)を隙間なく連結し、それを上部の箱の中にある軸とスプリング(バネ)で巻き上げるという精密なメカニズムが必要です。
部品点数も多く、製造に大きな手間とコストがかかっていました。

2. 量産によるコストダウンの壁

当時の一般的な戸建て住宅(特に木造住宅)では、引き戸の雨戸がごく標準的な仕様でした。サッシメーカーも雨戸を大量生産していたため、価格が非常に安く抑えられていました。

一方、シャッターは店舗の入り口や車庫などでの利用が主でした。一般住宅用の需要がまだ少なかったため、大量生産によるコストダウンが効かず、どうしても割高になってしまっていたのです。

3. 素材と加工技術のハードル

現在主流の住宅用シャッターは、アルミを薄く成型して中に発泡樹脂などを詰め、軽さと丈夫さ、そして静音性を両立させています。

しかし当時の技術では、薄くて丈夫な部品を安価に大量に作ることが難しく、スチール(鉄)製のものも多く存在しました。そのため、サビ対策の塗装コストがかかることや、毎日の開閉作業における重さといった課題もありました。

4. 「最新の洋風設備」としてのブランド価値

当時の日本の住宅はまだ和風や和洋折衷のデザインが多く、引き戸が視覚的にも馴染んでいました。

そこに登場した窓用シャッターは、「洋風の新しい家につける、スマートで最新の設備」という付加価値がありました。そのため、メーカー側も利益率の高いハイグレードな商品として展開していたという側面もあります。

まとめ

「板を横にスライドさせるだけ」で安価に作れる雨戸に対して、複雑な機械仕掛けを伴うシャッターは、どうしても製造コストが高くならざるを得ない時代がありました。

その後、2000年代(平成10年代)以降になると、防犯意識の高まりや製造技術の進歩、さらには電動シャッターの普及などにより劇的なコストダウンが進み、現在のように新築の戸建てで主流となっていきました。

普段何気なく開け閉めしている窓周りの設備ですが、その仕組みの違いには、当時の製造コストや技術の壁、そして住宅スタイルの変化が色濃く反映されています。