2023年12月、自宅の屋根に太陽光発電を付けた。定格1.126kW、蓄電池なし。契約金額は145万円(税込)。

当時は「まあこんなものか」と思って契約した。3年近く経った2026年9月、雨の日に電力需給の話をAIとしていた流れで自分の太陽光の話になり、Google Driveに残していた契約書類を全部読んでもらった。結論から言うと、相場の2倍の価格で契約していた。

先に書いておくと、これは業者を糾弾する記事ではない。契約は自分の意思で結んだもので、法的にも問題はない。設備そのものはきちんと働いている。ただ、同じ状況の人が同じ失敗をしないように、事実と数字を全部残しておく。

契約の内容

書類に書いてあることをそのまま並べる。

契約の当事者

  • 受注者(契約主体・振込先):TEPCOホームテック株式会社(東京電力グループ)
  • 営業・施工・点検:エコラル株式会社(TEPCOホームテック提携店)
  • 見積の設計・シミュレーション作成:株式会社日紅コンストラクション

営業に来たのはエコラルの「省エネプランナー」で、契約書と見積書の発行元はTEPCOホームテック。日紅コンストラクションは書類上の設計者だが、東京の住所(豊島区池袋2-42-3オスカービル5F)も広島の住所(広島市安佐南区八木9-11-12)もエコラルの東京支店・本社と同じなので、実質的にはエコラルと同じグループと見てよさそうだ。つまり「営業・設計・施工はエコラル側、契約と代金はTEPCOホームテック」という構造だった。

見積書(2023年10月20日、TEPCOホームテック発行)

項目金額(税抜)
太陽電池モジュール 長州産業 CS-340B81 ×2枚404,600円
太陽電池モジュール 長州産業 CS-223B81 ×2枚265,400円
パワーコンディショナ 長州産業 SSITL30E1CS(3.0kW)235,000円
カラーモニターセット CMCS-P05138,000円
標準設置工事(架台、仮設足場、配線、申請代行、処分費など)189,300円
追加足場85,970円
小計1,318,182円
消費税131,818円
合計(税込)1,450,000円

モジュール合計1.126kW。屋根はスレート、勾配19度、ほぼ南向き。メーカー試算の年間発電量は1,204kWh。

補助金

  • 東京都(家庭における太陽光発電導入促進事業):169,000円
  • 葛飾区(かつしかエコ助成金):90,000円
  • 合計:259,000円

実質負担は1,191,000円。

保証(長州産業)

  • モジュール出力保証:25年
  • パワコンなど機器保証:15年
  • 架台・雨漏り:10年
  • 保証開始:2024年2月19日

機器の値段は、すべてメーカー希望小売価格だった

型番で調べて分かったことがある。見積の機器価格は、1円単位でメーカー希望小売価格と一致していた。

機器見積(税抜)メーカー希望小売価格実勢価格の目安
パワコン SSITL30E1CS235,000円235,000円+税後継機が通販で約134,000円
モニター CMCS-P05138,000円151,800円(税込)通販で83,000〜94,000円
モジュール CS-223B81132,700円/枚145,970円(税込)施工店の仕入れは定価の2〜3割が一般的

145万円のうち104万円が機器代で、それが全額定価だった。一方、工事費は標準工事19万円+追加足場8.6万円で、こちらはむしろ安い。高かったのは工事ではなく、機器を定価で買わされたことだった。

定価で売ることは合法だ。ただ、通販でも定価の6割で買えるものを定価で見積に載せるのは、相見積もりを取らない客向けの価格だと言っていい。

相場だといくらだったか

最安を狙わず、地元の施工店や一括見積もりサイト経由の中堅業者に、同じ仕様で頼んだ場合の目安。

項目相場(税込)今回(税込)
モジュール4枚15〜20万円73.7万円
パワコン 3.0kW12〜15万円25.9万円
カラーモニター8〜10万円15.2万円
標準工事20〜25万円20.8万円
追加足場8〜10万円9.5万円
合計65〜80万円145万円

中央値で75万円前後。補助金25.9万円を引くと実質49万円。今回の119万円との差は約70万円。

なお、1kWという極小システムは構造的に割高になる。足場・パワコン・申請・工事の固定費はパネルが1kWでも5kWでもほぼ同じで、だから「1kWあたり」の単価で見ると悪く見える。それを差し引いても、今回は相場の2倍だった。

採算

  • 年間発電量:約1,200kWh(メーカー試算)
  • 電気の単価:契約当時の実績で約30円/kWh、現在は再エネ賦課金の上昇で33〜35円程度
  • 年間の効果:3.6〜4.2万円(ほぼ全量自家消費)

実質負担119.1万円に対して、回収に28〜33年。パネルの寿命が25〜30年なので、ぎりぎり届くかどうか。

電気の単価年間効果20年25年30年
30円3.6万円72万円90万円108万円
35円4.2万円84万円105万円126万円
40円4.8万円96万円120万円144万円

これに、後で書く「発電量が見えることで使い方が変わる」効果が加わると、もう少し縮む。

別の言い方をすると、毎月の電気代は3,000円ほど下がっている。ただ、その電気を作るために払った設備代を20年分の発電量で割ると、1kWhあたり約50円になる。東京電力から買えば30〜35円の電気を、自分の屋根で50円で作っている計算だ。相場で契約していれば、同じ計算が1kWhあたり20円になり、電力会社より安い電気になっていた。

「15年で元が取れる」と言われた根拠

契約時に「15年くらいで元が取れる」と説明された記憶があった。書類を探したら、営業時に受け取った「光熱費の比較検討シート」(日紅コンストラクション作成)に根拠が書いてあった。

シートに書かれていた数字

  • 現状の電気代:月19,000円・633kWh → 年228,000円
  • 導入効果:自家消費100kWh/月 × 46.09円 = 4,609円、「節約効果(見える化)10%」1,900円、合計 月6,509円
  • 導入費用:145万円(都補助後128.1万円)を180回(15年)ローン、金利2.60%で組んだ場合、月々9,736円(補助後8,601円)
  • 差し引き:▼3,227円(補助後▼2,092円)
  • 光熱費上昇率1.70を掛けて「今後30年の光熱費は1,162万円」「生涯光熱費1,000万円以上」

「15年」は、このローンの返済期間だった。私は現金一括で払ったので、ローンの行は本来関係がない。それでも「15年で元が取れる」という言葉だけが記憶に残った。

シートをよく読むと

月々の返済8,601円に対して導入効果は6,509円。差額の2,092円は、営業側の数字でも毎月自分が払う分だ。シートにはそれが「▼2,092」と書いてある。「月々2,092円の実質負担で太陽光が手に入る」という見せ方だったのだと思うが、引き算をすれば「15年間、毎月2,092円の持ち出し」と同じ意味になる。契約時の私はその引き算をしなかった。

仮定のどこが甘いか

  1. 46.09円/kWhは、東京電力の従量電灯Bで最も高い第3段階の単価に燃料費調整と再エネ賦課金を足した数字。実際の平均単価は30円前後
  2. 「見える化で10%節約」は根拠のない一律の仮定。ただし後述の通り、私の家では結果的に効果が出ている
  3. 光熱費上昇率1.70倍で「1,162万円」と煽っているが、太陽光で減らせるのは使用量の16%だけで、残りの84%は太陽光があってもなくても同じように値上がりする

数字が並んでいると検証した気になる。しかし、単価と節約率と上昇率の3つを自分で疑えば、電卓ひとつで崩せる内容だった。

契約までの流れ

見積書の日付が10月20日、契約内容確認書の記入日が10月22日。訪問から2日で契約している。見積有効期間「1か月」と補助金の話が並んでいて、考える時間を取る発想がなかった。

契約内容確認書は「個人の意思で購入を決めた」「経済性について計算根拠を示した書面で説明を受けた」「補助額の説明を受けた」など17項目に全部チェックして署名する書式だった。これは客を守る書類ではなく、後から「説明されていない」と言えなくするための書類だ。違法ではないが、そういう目的のものだと、今なら分かる。

工事で起きたこと

工事はエコラルの施工で行われ、その工事中に壁に誤って穴を開けられた。ここで初めて契約主体であるTEPCOホームテックが表に出てきて、責任を持って修理してくれた。修理は当然のことだが、事後の対応そのものは問題なかった。契約主体が大手だったことは、ここでは良い方向に働いた。

設置後は2年に一度、エコラルが点検に来ている。太陽光のトラブルで最も多いのは施工後数年で出る雨漏りなので、定期的に屋根を見てもらえること自体は評価している。ただ、定期点検は蓄電池やパワコン交換を提案する営業機会でもあるので、次に提案が来たときは、点検の恩と価格を切り離して考える。

設備そのものは、ちゃんと働いている

損の話ばかり書いたが、設備は正しく動いている。

  • 年間約1,200kWhは、我が家の年間使用量の約16%。電気の6分の1を自給していて、電気代が上がるほどこの価値は増える
  • 発電量をシステムで取得して見ているので、洗濯乾燥機や食洗機を昼に回すようになった。営業シートの「見える化10%」は根拠のない仮定だと書いたが、私の家では結果的に行動が変わっている
  • 停電時に日中1kWの自立運転ができる
  • パワコンが3.0kWなので、屋根に載るならあと1.9kW分は今のパワコンのまま増設できる(増設分に補助金は出ない)

つまり、効果のないものを買ったのではない。効果のあるものを、2倍の値段で買った。同じものを相場の75万円で入れていれば、回収12〜14年で、その後は丸々利益だった。

なぜ即決したのか

思い当たる理由がある。

今の家は、まだ建ってもいない段階で、その場で即決して注文を入れた。普通に考えれば無謀な買い方だ。ところが結果的に、この価格帯で手に入る家としては最上級のものが手に入った。土地がほぼ正方形で、家の前にバイク2台、車1台、自転車2台を置けている。同じ価格帯の家を今でもたまに見るが、ここまでの条件のものは見当たらない。

この成功体験があった。「即決しても、自分の判断は当たる」という感覚が残っていた。太陽光の営業が来たとき、同じ感覚で2日で決めた。家のときは運が良かったのであって、判断が良かったのではない。それが太陽光で裏目に出た。

当時のAIにも一応聞いていた。2023年秋のChatGPTに見積を見せたら「妥当な範囲」というような答えが返ってきた記憶がある。今のAIに同じ書類を渡したら、最初の回答で「相場の2倍」と言われ、型番を調べさせたら「機器は全部定価」と出てきた。3年でツールがここまで変わったというのも、この記事を書く理由のひとつになった。

取り戻せるか

書類を全部読んだ上で、返金を求める手段があるかも考えた。結論としては、ほぼない。

  • 価格に合意して署名している以上、「高かった」は法的な理由にならない
  • シミュレーションには「参考資料であり削減を約束するものではない」の但し書きがあり、書面の数字自体は嘘ではない
  • 「15年で元が取れる」は口頭で、書面には残っていない
  • 契約内容確認書で、説明を受けたことに自分でチェックしている

消費生活センターに相談する選択肢は残っているが、期待値は低い。この記事を書くことのほうが、次の人に対しては効果がある。

同じ失敗をしないためのチェックリスト

  1. kW単価で見る。総額ではなく「1kWあたりいくらか」を計算する。2026年時点なら20〜25万円/kWが目安
  2. 機器の型番で価格を調べる。見積の機器価格がメーカー希望小売価格と一致していたら、その見積は定価で組まれている。通販価格と比べれば数分で分かる
  3. 相見積もりを3社取る。訪問販売と一括見積もりサイトで価格が2倍違うのは珍しくない
  4. その場で決めない。見積有効期間や補助金の締切を理由に急かされても、最低1週間置く
  5. 営業のシミュレーションは自分で引き算する。単価、節約率、上昇率の3つの仮定を疑う。月々の支払と導入効果を引き算して、どちらが大きいかを見る
  6. 回収年数を自分で計算する。年間発電量×自家消費単価で年間の価値を出し、実質負担で割る。20年を超えるなら投資としては厳しい
  7. 契約主体と営業会社を区別する。契約書の受注者が誰か、保証は誰が出すか、点検は誰が来るかを確認する
  8. 補助金は業者の値引きではない。補助後の金額で安く感じても、補助前の価格で相場と比較する
  9. AIに書類を読ませる。契約前に見積書をそのまま渡して「相場と比べてどうか。機器の価格を型番で調べて」と聞く。2023年のAIには無理だったが、2026年のAIはこれができる

最後に

TEPCOホームテックもエコラルも実在する会社で、契約も工事も保証も点検も、書類通りに履行されている。壁の穴も直してくれた。悪い会社だとは思っていない。

私は相場の2倍で買った。それを3年間気づかなかった。気づくきっかけは、雨の日にAIと電力の話をしていたことだった。

この記事が、これから太陽光や住宅設備を検討する誰かの、相見積もりを取る理由になれば十分だ。