オルカンやS&P500の投資信託がここまで人気になったのは、結局円安のおかげなんじゃないか。そんな話を見かけました。
2021年ごろは1ドル110円前後だったのが、今は150〜160円台。たしかにこれだけ円安が進めば、ドル建ての資産を持っているだけで円建ての評価額は膨らみます。
一方で、為替は逆に振れることもあります。円高が進めば同じだけ削られるわけで、「じゃあ結局どうなの」というところは誰にも分かりません。
ただ、いろいろ調べて整理してみると、「為替がどれくらい効くか」は投資期間によってかなり変わる、という点が面白かったので、まとめておきます。
ここ数年のリターンを分解してみる
まず、円安がどれくらい効いていたのか。ざっくりの数字です。
- S&P500(ドル建て):2021年初めは3,700〜3,800ポイントあたり。2025年後半には6,000台後半。株価だけで8割前後の上昇
- 為替:110円 → 150〜160円で、+40%前後
円建てのリターンは「株価の倍率 × 為替の倍率」なので、1.8倍 × 1.4倍で2.5倍前後になります。
円安の寄与は確かに大きいです。ただ、主役はあくまで米国株そのものの上昇で、為替は上乗せという位置づけでした。為替が横ばいだったとしても、十分に注目されるリターンだったと思います。
人気の理由としては、2024年に始まった新NISAや、信託報酬の引き下げ競争でインデックス投資が身近になったことも大きいはずです。
期間が長いほど、為替の影響は薄まる
ここからが本題です。
為替の影響は、投資期間が長くなるほど相対的に小さくなっていきます。これは「ドルで持っているから」ではなく、株と為替の性質の違いによるものです。
- 株価:企業の成長が続けば、2倍、4倍、8倍…と複利で積み上がっていく
- 為替:どれだけ動いても、何十年で何倍にも膨らみ続けるものではない。ある程度の範囲を行ったり来たりする
期間が延びるほど株価の倍率は大きくなりますが、為替の倍率は一定の範囲にとどまります。だから全体に占める為替の比重が下がっていく、という仕組みです。
年率に直すとよく分かる
同じ「3割の円高」でも、何年で割るかで年あたりの影響が大きく変わります。
| 期間 | 3割円高の年あたりの影響 |
|---|---|
| 5年 | 約-6.9% |
| 10年 | 約-3.5% |
| 20年 | 約-1.8% |
| 30年 | 約-1.2% |
株が年5%で成長したと仮定して、最終的に3割円高になった場合の円建ての結果も計算してみました。
| 期間 | 株価の倍率 | 3割円高後の円建て |
|---|---|---|
| 5年 | 約1.28倍 | 約0.89倍(マイナス) |
| 10年 | 約1.63倍 | 約1.14倍 |
| 30年 | 約4.32倍 | 約3.02倍 |
5年だと株の上昇分を為替に食われてマイナスになりますが、30年なら3割の円高を食らってもしっかり増えています。
とはいえ「微々たるもの」ではない
じゃあ長期なら為替は気にしなくていいのか、というと、そこまでは言えません。
歴史上いちばん厳しかったのは、固定相場だった1971年の1ドル=360円から、2011年の70円台後半まで続いた円高です。40年で円の価値が4倍以上になり、年あたりにすると約-3.8%の逆風が吹き続けたことになります。
同じ期間のS&P500は、株価だけで約12倍(1971年の100前後 → 2011年末の1,250前後)。円建てにすると次のようになります。
- 株価だけ:約12倍 × 約0.21倍 = 約2.6倍
- 配当再投資込み:ドル建てで40倍前後になっているので、円建てでも9倍前後(いずれも概算)
史上最大級の円高を40年間受け続けても、配当込みならプラスは大きく残りました。ただ、為替がリターンのかなりの部分を持っていったのも事実です。
また、上の話は「為替に長期的な一方向のトレンドがない」前提です。たとえば日本のインフレ率が米国より低い状態が続けば、理屈の上では長期的に円高方向の圧力がかかるので、その分は時間が経っても消えずに残ります。
まとめ
- 数年単位:為替が株のリターンを上回ることは普通にある。為替の影響が主役になりうる
- 数十年単位:株の複利成長が勝ちやすく、為替は目減り要因の一つくらいになる。ただし大きなトレンドがあれば年1〜4%程度は削られうる
もう一つ大事なのは、薄まるのはあくまで「リターンに対する比率」だということです。評価額が為替で上下する金額そのものは、資産が大きくなるほど大きくなります。最終的に効いてくるのは取り崩すときの為替水準なので、一度に全部売らず、何年かに分けて崩すのが現実的な対策になりそうです。
円安か円高か、今後どうなるかは分かりません。それでも、自分の投資期間が5年なのか30年なのかで、為替との付き合い方はだいぶ変わる。そのことが整理できたのは、個人的に収穫でした。
※この記事は個人的な整理であり、特定の投資を勧めるものではありません。数字はいずれも概算です。