前回、8年払った医療保険を解約した話を書いた。「貯蓄で医療費を払えるなら医療保険は経済的にはほぼ不要」という結論だった。

その流れで妻の保険(月約4,000円の医療保険)も見直したのだが、こちらは 残す ことにした。同じ家計で、同じ理屈から、逆の結論が出た。矛盾しているようで、していない。その理由を書いておく。女性の医療保険には男性と違う論点がいくつかあることも、調べてみて初めて分かった。

「不要論」が成立する3条件

前回の記事を整理し直すと、医療保険が不要と言えるのは次の3つが揃ったときだ。

  1. 給付イベントが 不特定(いつ病気になるか分からない)
  2. 給付イベントが 遠い(直近に予定された医療イベントがない)
  3. 最悪ケースの医療費を 貯蓄で吸収できる

私の場合は3つとも揃っていた。だから「80歳まで払うと169万円、受取見込みは多くて90万円」という期待値のマイナスを受け入れる理由がなく、解約した。

妻の場合、3は世帯として同じ。しかし1と2が崩れていた。将来的に出産の可能性がある からだ。

出産は「日付の入った医療イベント候補」

出産の約2割は帝王切開になる。帝王切開は公的保険が適用される正式な手術+入院なので、医療保険の給付対象だ。

妻の契約で試算すると、帝王切開(入院9日程度)の場合、入院給付金約7万円+手術給付金5万円。さらに妻の契約には 女性疾病入院特約 が付いていて、帝王切開や妊娠の合併症は女性特有疾病として日額が上乗せされる。合計すると17万円前後になる見込みだった。切迫早産などで入院が長引けば、給付はさらに膨らむ。

「いつ来るか分からない病気」に備えるのは分が悪い賭けだが、「数年内に2割の確率で17万円」は話が別だ。出産までの保険料総額と給付の期待値を並べると、差はかなり小さくなる。少なくとも、私の契約のような大きなマイナスではない。

もうひとつの理由:妊娠すると保険に入りにくくなる

これが女性特有の最重要ポイントだと思う。

医療保険は、妊娠が分かってから入ろうとすると、条件付き加入(今回の妊娠に関する入院・手術は対象外、など)になるのが一般的だ。つまり「必要になってから入る」が通用しない。

なので「今は解約して、出産が近づいたら入り直す」という一見合理的なプランには、入り直しの告知・タイミングという不確実性が挟まる。月1,000〜2,000円の節約のために、一番給付が出そうなイベントの直前で保障を組み替えるのは、順番として悪手だと判断した。

私の場合は「入り直す必要自体がない」から切れた。妻の場合は「数年内に保障が欲しい理由が具体的にある」から、持っているものを手放す理由がなかった。同じ軸で測って、前提が違うから結論が分かれた。それだけの話だった。

職場の団体保険も検討した(そして見送った)

ちょうど妻の勤め先で入れる団体保険の案内が手元にあった。団体割引で個人契約より2〜4割安いことが多く、1年更新で身軽。乗り換え先としては有力候補だった。

見送った理由は3つ。

  • 申込のタイミングと保障開始の間が空いていて、先に解約すると空白期間ができる
  • 妻の契約に付いている女性疾病特約と同等の上乗せが、団体側のプランにあるか不明だった
  • 団体保険は定期的に募集がある。つまり「今回入らないと損」ではなく、出産後の見直しタイミングで改めて選べる

団体保険自体は良い仕組みだと思う。ただ「安いから乗り換える」の前に、いま持っている特約と乗り換え先の中身を並べる工程は飛ばせない。

電話一本で年2.6万円変わった話

見直しの過程で一番リターンが大きかったのは、解約でも乗り換えでもなく、契約内容の確認 だった。

妻の契約には「健康割引特則」が付いていた。契約から5年間、給付対象の入院が通算5日未満なら、以後の保険料が下がる仕組みだ。妻の場合、月6,228円→月4,037円。年間で約2.6万円の差になる。

この手の割引・特則は設計書の下のほうに小さく書いてあるだけで、適用されているかどうか本人も把握していないことがある。保険を見直すなら、解約や乗り換えを考える前に、まず「いま適用されうる割引が全部適用されているか」を確認するのが一番コスパのいい一手だった。

おまけ:給付金の請求は3年で時効

調べていて知ったことをもうひとつ。給付金の請求権は保険法で 3年の時効 と定められている。逆に言えば、過去の入院や手術を請求し忘れていても、3年以内なら遡って請求できる。

たとえば日額8,000円の契約で3週間入院していたのに請求していなければ、約17万円が眠っている計算になる。診断書の発行(病院に依頼、数千円)は必要だが、権利として消える前に請求する価値は大きい。

ひとつ注意点として、健康割引のような「入院がないこと」を条件とする特則が付いている契約では、過去の入院を請求すると割引が取り消される場合がある。その場合は「受け取れる給付金」と「失う割引の残存価値」を並べて比べることになる。うちの場合は、いずれ見直す前提の契約だったので、割引の残存価値は小さく、請求が明確に得という計算になった。

まとめ

  • 医療保険の要不要は「イベントが不特定・遠い・貯蓄で吸収可能」の3条件で決まる
  • 出産の可能性がある場合、1と2が崩れる。帝王切開は約2割の確率で給付対象になり、女性疾病特約があれば給付はさらに厚い
  • 妊娠が分かってからでは保険に入りにくい。「必要になったら入る」が効かない領域
  • 解約・乗り換えの前に、割引の適用状況と請求し忘れの確認。地味だがリターンが一番大きい
  • 出産が終われば3条件が揃うので、そのとき改めて解約や団体保険を検討する

夫婦で同じ商品でも、置かれたフェーズが違えば結論は逆になる。「医療保険は要る/要らない」の二択で語られがちだが、実際は「いつの自分にとって」が抜けると答えが出ない話だった。

※保険の要否は貯蓄額・家族計画・契約内容で大きく変わります。この記事は一世帯の判断の記録で、特定の選択を勧めるものではありません。